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ページ2 昼休み。ざわつき始めた校内に放送が流れる。 「新聞部員にお伝えします。新聞部員は至急部室に集まってください。繰り返します……」 いやな予感を胸にヒカリ、ノブ、ユミは屋上にいた。 アキは放送の呼び出しに応じて部室へと向かっていた。 3人は屋上で弁当を食べながら、流石にアキの事を話題に上げていた。もっぱら批判ばかりが飛び交う。 そんな中、ヒカリは冷静にアキを判定していた。 「お兄ちゃんは、……怒ってなかったよ」 今朝のその会話が、アキの行動を冷静に分析させていたようだ。もっともヒカリも納得までは出来ずにいるようだった。 とにかくアキがなんで呼ばれたのか。新聞部が何をしようとしているのか。それが分からない限りは何も出来はしないのだ。 3人は何を話すでもなく昼食を取り終えた。 午後、アキは授業には出ていたが、その顔には翳りがあった。ノブも声が掛け辛く、アキもその日は一人で帰ったと言う。 光は昼近くになってようやく目覚めると、台所の置手紙を無視し、どうせ帰る時間でも書いてあるのだろうが、外へ、サイクリングへと出掛けた。コンビニで買ったパンなど食べつつ東の山の麓を目指す。山すその黄柳野西高校の裏にある大池公園にでも行ってみようなどと考えたのだ。 幸いこのところ晴れが続き、この日もサイクリング日和の暖かな1日だった。公園につくと適当に自転車を止め、ベンチにごろんと寝転がる。 「ふぅ〜〜」 自宅謹慎もいいもんだ。などと冗談にも思ってしまう陽気。と、いつの間にか眠りについてしまった光は、ふと気配に気付き目を覚ました。 ―――気付かなかったが、木陰に2人、誰かが俺を見ている。 光は気付かないフリをして立ち上がると自転車を動かした。 ―――ぶらつけば二日に一人は“能力者”に会える。 同年代の人間だとすれば黄柳野西か。それともオレを付けて来た、か。光はとりあえず住宅地へ入り右左折を繰り返す。巻こうとしている訳ではない。見通しの悪い交差点を曲がった所で待ち伏せしてやる。光は適当な場所を見つけると自転車を止め振り返った。 案の定。 「ぬっ!?」 追っ手は現れた。2人とも原付に乗った高校生だ。しかも見覚えのあるその制服は…… 「東郷!? お前等オレに何のようだ?」 「君の“力”に興味があってね」 男はいきなり核心をついてきた。 男とは他でもない、片浜だ。もう一人に尾行をさせ、連絡を取り合ってここで追いついたらしい。 片浜の、新聞部の攻撃が始まる。 「“力”?」 光はとりあえずとぼけてみせた。まあ当然の反応と言える。 「田川に菊池に山鹿。一人の人間にやられるとは思えなくてね」 「事実は小説より奇なり、ってことなんじゃねぇの?」 「まぁ、一人にってのは……良いんだけどね」 片浜は右手で髪をかきながら光を見つめなおし、続けた。 「問題はその方法だよ……」 「どういう意味だ?」 「だからさ。お前はどういう“力”の持ち主かってコトだよ。オレが東北で見たヤツの“力”は凄かったな……」 北。 昨日、赤平の言っていたキーワードと一致した。 「お、お前そいつのコト知ってるのか?!」 「知ってるもなにも……オレもあいつに会ってから……」 「お前も能力者になったって言うのか?」 片浜の口から笑みがこぼれた。 「今、認めたよね?」 やられた。 光は悟った。全ては片浜のかまかけだった。 おそらく昨日の赤平との会話からそれまでに調べていたのであろう事実と共に、一番ウケの良い記事をでっち上げられる一言を待っていたのだ。 そしてそれが、図星を突かれた格好になってしまった。 「自分で認めたんだ。文句あるまい」 「オレが、お前の記憶を消す能力を持ってるとしたら?」 「今、あそこを走っている原付。マイクで録音した今の会話はちゃんと保管させてもらうさ」 光があっけに撮られた瞬間、脇にいた男はすでに出発していた。 光は手を出せなかった。それこそ片浜の思う壺だ。“力”の検証をされるだけだ。 片浜はしばらく光の様子をうかがって、 「ネタは揃ったし、記事も書いてあるから。謹慎明け、よろしく♪」 言うとその場を立ち去っていった。 不覚。 しかしもう取り戻しは出来ない。 信じる信じないはこの際関係が無い。高校でまた騒ぎが起こることは必至だ。そして自分の居場所はまた微妙になる。 しかも今のこの状態は、いつまた危機が、“力”を使わねばならない状況が訪れるかわからない。 もちろんそうなれば、注目されている中で今度こそ自分の“力”は確実に露呈してしまうだろう。 光はただ暖かな日差しの中立ちすくむしかなかった。 アキは自分が光にしたことを悔やんでいた。 片浜は光へ尾行をつけることを決定していた。アキもそれに選ばれた。何とか断わりはしたが、その異様な盛り上がりにアキは恐怖を感じていた。自分の軽はずみな行動で、親友のプライバシーが崩れていく。 アキは孤独の中、何年か振りに……泣いた。 第3話 「錯綜」 了 事後の言い訳を聞いてみる 前のページへ戻る 次のページへ進む 小説トップページへ戻る |