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ページ2 「誰だ!? って、聞くまでも無いか……」 「案外冷静だな。それとも、“北”統合する自信がある、か?」 「生憎自信も無けりゃその気も無い。お前らの頭ってなどんな奴だ?」 「始めるか……」 光を囲んだ男は4人。一人がかばんを投げつけた。 「!」 それが合図。4人は一斉に光に突っ込む。夕方。場所は駅のすぐ近く。裏通りとはいえ人目もある。光はとりあえず避け切ることを考えた。一人目の拳を打ち下ろして流し、背後からの蹴りをよけて大きくジャンプすると橋の欄干の上へ立つ。 「おっととと、意外と幅が無いな……。へへ、牛若丸になった感じだな」 「野郎っ!! 凸( ̄へ ̄)」 「じゃ〜〜ね〜〜〜」 「なっ!!??」 光は欄干から川の方へ飛んだ。4人は急いで橋から下を見下ろす。落ちた形跡は、無い。 「馬鹿なっ! どこ行きやがった!?」 この橋はその下に人が一人通れるほどのスペースがあった。光はそこを通って駅側へと移動し、もう一度反対側へとよじ登っていた。 「い、いた! あそこだっ!」 「げ……、まともにやってられっかよ〜〜〜」 光は駅前の人ごみにまぎれた。 東郷は住宅街。新城のベッドタウンのような場所になっている。新東京にも近くラッシュは相当なものだ。豊橋から東三河市を縦断して遥か諏訪へと延びる飯田線に、新東京を環状する浜名線から放射状に豊橋、豊川、新城、本長篠へ鉄道線が延び、東郷からは南へ新城で乗り換えるか北へ本長篠で乗り換えるかすれば新東京へと出られる。豊橋経由での直通列車もあるが大きく迂回してしまうから前述の2方法が主流だ。とにかく上下線両方とも混んでしまうから辛いのだ。 さて、今は夕方のラッシュ時間。ドアが開くたびけたたましい音の出てくるパチンコ屋。地元の生徒がたむろするゲーセン。晩のおかずでも買おうかとコンビニから商店街まで人でいっぱいだ。 東郷地区は駅付近から光達の通う学校の麓へ続く商店街が古い街、西の丘の上の団地や住宅街と東のバイパス沿いが新しい街、駅の付近にはまだまだ古くからある小さな路地が多く、光は地の利を生かして4人を巻くと回り込んでまた橋の方へと出てきていた。 「ふ〜〜、疲れた。でもなし崩し的に“北”の統合させられるんじゃないのか? やばいぞこれは……」 橋を渡って川岸を歩く。堤防から降りて小さな道を東へ、いつものルートだ。そのルートの先に、あの男が立っていた。 「あ……赤平……!?」 壁にもたれていたその男は、笑みとともに光へ視線を移してきた。 「あ……赤平……!?」 「よぅ、面白い話、聞いたぞ」 赤平はあたかも友人にあったかのように話し掛けてきた。 「俺が、大野の奴らに狙われてる……か」 「いや、お前が“北”を統合しようとしてる……ってとこだろうなぁ」 「!?」 「……違うのか? この前公園から逃げ出した女。あいつがそう言ってたぞ?」 「あ、あ、あ、あ、あ、あのアマ 凸( ̄へ ̄)」 「まあ手っ取り早く強くなりたけりゃ常に戦いの中に身を置けば良い。じゃあな」 赤平が去ると、不意に気配を感じて光は振り返った。自宅の庭から現れたのはヒカリだ。 「お兄ちゃん、何かあったの?」 「……あ、いや、別に……」 「嘘。誰かがお兄ちゃん探してる。すぐ近くまで来てるよ」 「! お前、そんな事まで分かるのか?」 「強い意志は感じるの。近いよ。多分橋の方」 さっきの場所だ。光は少し考えるとヒカリに「来るな」と一言言って走り始めた。東へ、少し大きな通りに出る。そこから北へ二本目ほどの小路へ入る。自宅の正確な位置を少しでも分からなくするためだ。 川に出ると堤防を少し南へ歩く。案の定、男たちは光を見つけ走り出した。 北へ、光は小さな公園まで走った。木々の多い、遊具も無い、ベンチがいくつか置いてあるだけの公園だ。 「はぁ、はぁ、やっぱ毎日走ってて正解だったかな?」 男たちは息を切らせて走ってきた。人数は4人、増えていない。どうやらいきなり攻めたりはしないようだ。 光には、勝つ自信があった。“力”は完全には使えずとも田川との喧嘩を考えれば勝てるだろうと見当はついた。アキの情報から田川より強い奴は大野の頭をやっている山鹿、そして“南”の新勢力竹田、そして一番恐れられているのが“中”の湫田東高校の小林。 もともと格闘技を少しかじっていた光は、冷静に行動できていた。 「息上がってるじゃん。大丈夫?」 「てめぇっ! 凸( ̄へ ̄)」 4人が一斉に飛び込む。 そう言えば4人はかばんをどうしたのだろう、と、ナレーションが考え込む間にも、4人対光の喧嘩は、人目を避けた公園で始まった。 光はとりあえず防御に徹した。攻撃をなぎ払い、よけ、逃げ、隙を探す。もちろん4人の攻撃を普通に避けきれるわけも無く、時々“力”を使ってはいた。そして二人の男が両横に回りこみ拳を引いた瞬間だった。 「隙ありぃ〜〜〜!!」 光は両の掌をそれぞれの男の腹にあてがった。 「ハァァーーーッ!」 掌に力をいれる。得意の“力”の放出。瞬間、 「ぐはっ!!」 悲痛な叫びとともに二人の男ははじかれる。 乾いた土の上に砂埃を巻き上げて二人の男が倒れた。これで2対1だ。 「な……んだ、今のは……」 二人はたじろいだ。見たことも無い倒され方だった。 「次はお前らか?」 無機質に光がつぶやく。二人は一歩あとずさった。かまわず光はにらみつけたまま笑みを浮かべた。 決定的だった。 二人は一歩、二歩後ろへ下がると振り返って一目散に公園から逃げていった。 「ふぅ〜〜〜〜」 大きなため息とともに光は普段の光に戻った。“力”の制御。それを守った上でその威力を上げていくしかない。もし本気にならざるを得ない状況に陥ったとき、果たして自我を保つ事が出来るのか、保証は、何も無い。 ヒカリはその場でずっと立っていた。何も起こらないで欲しい。そう願っていた。そしてしばらくして光が戻ってくる。 「お兄ちゃん、無事だったの?」 「お〜う、ヒカリ。まあな。でもどうやらこのままじゃ……」 「え?」 「大丈夫♪ 俺は正気のままでも少しは“力”使えるようになったし、なんとかなるでしょ」 「…………」 心配そうなヒカリを促して光は家へと入った。 夕暮れの東郷。その北の長篠でゆっくりと山鹿たちは動き出していた。 小競り合いの続く東三河市の勢力分布は少しずつ変化し、そしてそれは大きな流れとなっていく。それが勢力の裏側までを露呈する事になるとは、まだ二人には知る由も無かった。 ……つづく 前のページへ戻る 次のページへ進む 小説トップページへ戻る |