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ページ3 月曜日、高校は公園での事件の噂で持ちきりだった。噂の発信源は……。 「アキ!! 何ばらしてんだ、てめえ!!」 「な……何が?」 懲りない女のようだ。 光は病院へ連れて行かれたものの、ただの疲労ということですぐに釈放された。ヒカリとアキは警察で事情聴取。アキのおしゃべりに付き合わされた警官は御愁傷様といったところだ。おそらく本来の倍以上の時間は費やしているだろう。 さて噂だが、少し事実とは違っていた。アキもヒカリには配慮しているらしく、アキが襲われヒカリが目撃し通報、光がそれを救出、と、そう言うストーリーらしい。もっともアキに語らせれば、肉付けが多すぎてまとめるのに一苦労だろうが、しかしとにかく光は一応英雄になっていることは確かだ。 「でも凄いね……あの田川を倒しちゃうなんて」 光に話し掛けてきたのはノブだった。 「なんだノブ、田川って奴のこと知っているのか?」 「え、ああ、うん。中学の時に北二中との練習試合でさあ……」 「ああ、そういえばセンターの村上とか言う奴がリンチにあったとかなんとか……」 「うん、その相手だよ、たしか」 いつの時代にもそう言う連中はいる。特に東郷周辺は群雄割拠とでも言うか、チームみたいなものがいくつも存在している。現に光達の通う高校にも番を張っている男がいるらしい。 「でもあの田川をどうやって倒したのさ?」 「ん? ああ、え〜〜と……」 ノブの質問に光はなんと答えて良いのか分からなかった。 「……よく覚えてねえよ」 「ふ〜ん。無我夢中のうちにってやつ?」 「あぁ、多分そんなところだな」 光はそうあって欲しいと思っていた。しかし、そうでないことも同時に分かっていた。ヒカリに"リーディング"の力があるとするならば、双子の兄にも"力"があっても不思議ではない。そう思わせたのは、今朝のヒカリの一言だった。 「やっぱり、お兄ちゃんにも力があったんだね。私、知ってたよ……」 無言での登校。そして別れ際の土間でのヒカリの一言は、授業中も光の頭を離れることは無かった。 もし本当に相手を吹き飛ばすような力を持っているとすれば……。 光は一日中頭を悩ませていた。 やっと6限が終わった。 「ハァイ」 「Z…z…z…」 「ち……ちょっと! 狸寝入りなんかしないでよ!!」 いつもどおりの挨拶を交わすとアキが話を持ちかけてきた。(どこかで見た文章だな) 「ねぇ、夏休みってなにか予定ある?」 「また良からぬ企画でもたてたな? で、今度はなんだ? ロケット花火戦争か? きもだめしか?」 「旅よ旅♪ 3泊かそこらでひなびた温泉でもどう?」 「混浴?」 「あほ(即答)」 アキの話はこうだった。 アキの知り合いの関係者がとある村で温泉旅館をやっていて、安く泊まれる事が分かった。そしてその知り合いと言うのが盛里(注;名前は内輪ネタなので気にしないよーに)と言う鉄道ヲタクで旅行プランまで立ててくれたらしい。そこでいつもの五人にあと何人かプラスしてわいわいどっかに行こうと言うものだ。 「でね、旅館の近くに神野光って言う地名があるのよ〜」 「なぬ!?」 「気になるっしょ?」 「確かにな〜。まさか同姓だけでなくて同名までとなると……」 「行くでしょ?」 「そうだな……」 「"ユミちゃんが行くなら"は無しよ♪ 凸( ̄〜 ̄)」 「う……」 光が目線を上げたとたんのアキの先制攻撃。光はあえなく撃沈した。 アキはそのままノブを誘い、C組みの光のほうへと教室を出ていった。四人とも断りきれなかったのは、言うまでもない。 その日の夜。光は家の庭で"力"の存在を確かめようと躍起になっていた。 「フンッ! ハァッ! フンッ!」 「な〜に正拳突きなんかやっとらっせるん?」(名古屋弁:名和辞典参照) 「! ……爺っちゃんか」 話し掛けてきたのは光の父親(養父)だった。 「いっきなしほんな事始めや〜て。なんかありゃ〜たの?」 「あ、あぁ。ちょっとね」 秘められた力。もしそれが使えるようになるとしたら。果たしてメリットとデメリットはどちらが大きいのだろうか。 "男"はたまたま鳥居の公園を通ろうとしただけだった。それが、ちょうどあの事件に重なってしまっただけだった。 "男"の名は赤平孝弘。彼はそれ以来、光達の行動を追っていた。 「くそぅ!」 男の耳に聞こえてきたのは、目の前の家の庭から発せられた声だった。 一時間ほど汗を流したあと、光はその場にしゃがみこんでいた。 「はぁ……はぁ……ハァ……」 かなり息が上がっている。当然だ。今までにないオーバーワークだった。 俺には、そんな力は備わっていないのか……? しかし、だとしたら田川を吹き飛ばしたあの力はいったい……。 光が考えているとヒカリが話し掛けてきた。 「お兄ちゃん、いきなり何始めたの?」 「……別に」 「でも……」 「いいだろ、何してても。ほら、俺には"力"なんて無いんだよ。大体お前俺の何を知って……」 光ははっと言葉を飲んだ。ヒカリは動揺を隠せないでいる。 「そうか……俺の記憶の無いころの話だな?」 光がそう言うと、ヒカリはトタトタと自分の部屋へ篭ってしまった。 光には、記憶の戻らない時代がる。それは幼少の頃の記憶。ヒカリはどうやらその時代の記憶を持っているらしい。二人のいた孤児院で何かが起きたのだ。 ヒカリは何も言わない。親も何かを隠している。光は聞いてはいけない事だと悟っていた。しかし、同じ年のヒカリでも覚えていることだ。気にならないわけは無かった。 「親父ぃ! ジュース買ってくる!」 「ほいたらビールも一本買って来てちょ!」 「あとで金ちゃんと払えよ!」 光は家を出た。小路を東へ行き南北に走るやや大きな通りに出る。国道だ。南北に三軒ほどコンビニがある。光はその中からアルコールを扱っている店をチョイスして歩き出した。少し遠いが遠いと言ってもせいぜい歩いて10分もかからない。暖かなこの季節にはちょうど良い散歩にもなる。もっとも夜なので流石に少しは冷えるが、桜もすでに満開を越え、心地よい風が吹いている。 帰り道、小路へと折れた光は、目の前で自分を見ている男を見つけ、立ち止まった。 「誰だ? 俺に何か用か?」 「赤平孝弘。君の"力"が見てみたい」 人通りの無い小道で、二人は静かに対峙した。 ……つづく 前のページへ戻る 次のページへ進む 小説トップページへ戻る |