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ページ1 光たちの通う高校には休憩室というホールがあり、休み時間にはTVを見ることが出来る。二つのTVが、別々にケーブルTVの番組を流していた。 休憩室は南校舎の一階にあり、ここをぬけて講堂、食堂へ続く廊下へと行ける。 校舎は北校舎、南校舎と、その西に本館があり、南側に運動場が広がっている。 授業後、光達はアキに先導され食堂へと向かっていた。 「なんか最近カラオケばっかり行ってないか?」 光がアキに言う。 「楽しけりゃ良いじゃない。ねえユミ」 「う……うん。でも一番楽しんでるのはアキだよね」 「はっ、一番楽しんでるお前は良いけど、しらけてるノブはどうなるんだよ?」 「う〜ん、僕歌える歌あんまり無いからね〜〜」 他愛も無い会話をしながら、五人は階段を降り休憩室へと入った。相も変らぬ事件や事故の報道が続く。 「ねえねえ、TVで昨日やってたんだけどさぁ……」 アキが唐突に話を切り替えた。こういう時はアキの独壇場になってしまう可能性が高い。 「最近、超能力を使える人間が増えてるんだって」 「ふ〜〜ん」 ノブとユミはいつも通りの反応。光とヒカリは顔を見合わせた。 「ちょっ、な、なによぉ。そこまで呆れなくてもいいじゃん」 アキはそれがあまりに呆れて出た行動だと思ったらしい。しかし光とヒカリは動揺しただけだった。 実はヒカリにも、"超能力"と呼ばれるべき力があるのだ。 「ま、万一超能力が使えるとしたら、お前はどうするんだ?」 光は逆に聞き返してみた。 「そぉねぇ〜〜〜」 アキは実に楽しそうに考えを巡らせていたが、やがて答えを導いたようだ。 「相手を吹き飛ばせたりすれば私の美貌を持って痴漢にあっても怖くないし、相手の心が読めたりすれば、私の美貌が気になって仕方ないシャイなナイスガイを逃がすことも無いし、瞬間移動……」 「さ、飯食ってカラオケ行こうぜ♪」 光はアキをそのままに三人を食堂へと促した。 「あ、ち、ちょっ……、待ちなさいよぉっ! そっちから質問しておいて無視するなぁぁっ凸( ̄へ ̄)!!」 危なかった。ヒカリの"能力"は人の心を読むことなのだ。まあよくありがちなと言えなくも無いが、アキのあてづっぽうな発言は、的を射ていたのである。もっとも本当に"超能力"なのかどうかは光にも半信半疑な部分があるのだが、ヒカリがその事に随分ナーバスになっている事だけは充分承知していた。 アキは食堂に入ってからも喋りつづけていた。 「……でねでね、超能力者が増えているのが2010年の秋の、そう、東京壊滅と関係があるらしいのよ〜。それでさ、だからこそ日本で一番変化が出てるわけよ。私の考えではあの東京壊滅の時の爆発って言うのがぁ……」 アキの演説はカラオケに付くまで延々と続いたと言う。 「♪TROUBLE TRAVEL みんな旅に出よう あいつと行くんだからハチャメチャさ〜♪」 アキはカラオケに来るとさらに水を得た魚と化す。この五人でカラオケに来ると、ノブはほとんど歌わず、ユミが1割、ヒカリが2割、光が3割でアキが4割、と言う感じの割合で歌っている。 「そう言えばノブ、お前今年から目指すものが甲子園になったんだよなぁ」 アキの陶酔するボックスで、光はノブに話し掛けた。ノブは中学では野球部のエースだったのだ。 「一応、そうなるのかな(笑)。光もやれば良いのに、野球」 「俺が入部したら、お前は控えにまわされて、3年連続日本一だぜ?」 「本当に日本一になるんだったら、エースはあげるよ」 「なれるわけねえわな。それに高校じゃまだエースじゃないだろ、お前だって」 「ははは、まあね」 「こーゆー話だけは大きく出るなぁ、ノブは……」 「ちょっとぉ、あたしの美声、ちゃんと聞いてるぅ??」 光とノブの会話に、間奏に入ったアキが割り込んだ。 「お、おう、聞いてる聞いてる。なあユミちゃん」 「え? ふふ……」 「む〜〜、なんか超疎外感……」 ぶーたれるアキ。 「ほ、ほら、二番始まるぞ!」 いやはやカラオケではアキが中心に立つのは必至のようだ。しかし言うだけあってアキの歌はかなり上手い。対して光もまんざらではないので、授業後の遊び場イコールカラオケと言う方程式は、自然と出来上がった物のようだ。 カラオケは延々6時間も続き、帰る頃にはもうあたりは暗くなっていた。 「ふいぃ〜、ストレス解消♪」 「お前のどこにストレスが溜まってるんだ?」 アキの台詞に光が突っ込む。 「あんたの顔見てるとどんどん溜まってくわぁ 凸( ̄へ ̄)」 「ほぉぉ、奇遇だねえ。実は俺もそうなんだよ 凸( ̄へ ̄)」 「まあまあ、二人とも……(^^;」 仲介したのはヒカリだった。 アキを駅で見送ると、まず駅前でノブが別れ、用水路の橋でユミが別れ、各々が家へと帰路につく。 アキの家だけが少し遠く、二駅先の鳥居駅から少し行った所にある。そこまで行くと家も密集するほどはなく、実際アキの家の近くにはまだ畑も所々で見られる。 そんな市街地のはずれで、この兄妹達の運命は、動き始める。 「最近アキが誰かにつけられてるんだって」 ユミが光に話し掛けたのは、翌土曜日の朝だった。いつも通りにヒカリに起こされた光は、いつもより遅い登校時間にあわせて二人で家を出ると、堤防を渡った神社の角でユミと会い、坂へと差し掛かっていた。 「なんだいそりゃ?」 「ストーカーってやつ?」 ヒカリもなんだか興味を持ったようだ。 「それは分からないらしいんだけど……」 「どうせまた変な想像話をうんざりするほど聞かされたんじゃないの?」 「フフフ、まあそんなとこ」 ユミの濁した言葉に光の指摘は的中したようだ。 「でも、アキちゃんって帰り道に工事現場を通りぬけて公園を横切るんでしょ? 危ないよね、実際」 アキの近道コースは凄かった。 この五人、アキ以外は小学校からの幼馴染みで、アキとは中学で知り合ったのだが、その当時のアキの中学近道通学コースでは、空き地から壁(と言ってもそんなに高くは無いがしかし壁と呼べるもの)をよじ登ると言う凄まじい物だったし、小学校の頃は、これは光達の通っていた小学校とは違いアキの家の近くな訳だが、民家の庭を横切って駐車場のフェンスの穴をくぐっていたらしい。 さすがに中学の時のコースは遅刻ぎりぎりの時以外活用されてはいなかったようだが、小学校への近道コースは毎日使っていたというから恐ろしい。 そして、中学から続いている家から駅への最短ルートが公園−工事現場縦断ルートである。朝は地元の人にとっても当たり前だと言うこのルートだが、アキは平気で夜中でも使うと言う。神経が図太いと言うか、危機管理能力が無いと言うか……。 「まったく……しょうがない奴だなぁ……」 「誰が?」 「お前に決まって……げっ!?」 駅を過ぎたあたりから、どうやらアキが後ろにこっそりついて来たらしい。 「しょうがない奴ってなによ?」 「誰かに付け狙われるような危ない事を、そこかしこでやってるほどしょうもない奴って事!」 「ま、あたしってかわいいからねぇ〜〜♪」 「な、何を口走っておるのだ貴様は!?」 「きっとどこかの気の弱いお金持ちの男の子が私のことを気に入って……」 昨夜ユミに話された内容が、光達にも容易に想像出来てしまったのは、言うまでも無い。 さて、週休二日の御時世でなぜ彼らが土曜日に登校しているのかと言うと、この日は10時から新歓クラブ発表会があり、午後からはスポーツ大会があるからである。 午前で文科系クラブの演説による洗脳が施され、午後で体育系クラブの競技による洗礼が受けられるという、この時期恒例の、新入生にとっては地獄の一日なのである。 さて、光達四人は例の坂を登っていた。 「そう言えばみんなはどこに入るか決めたの?」 ユミのこの質問に対するアキの答えは、他の3人を震撼させるに充分であった。 「あたしはねぇ、スカウトまで来ちゃったんで決めたんだけどぉ……、新聞部♪」 「!!」 新聞部。別名フォーカス部。正式には部として認められていない、いわゆる同好会なのだが、その力は絶大だ。東郷高校における色恋沙汰のすべてが、ここに記録されていると言っても過言ではないらしい。特に年に何人かはいる"アイドル"的な女生徒にとっては、芸能人がスキャンダルを恐れるに等しい存在になっていた。 そして彼らの学年でユミは、どうやらその"アイドル"のうちの一人として人気が上がっているらしいのだ。 そのユミに一番近しい存在と言えるアキが新聞部に入部してしまうのだ。さらに別の見方をするなら、アキほど"フォーカス部"にあう存在も、そうはいまい。 「あぁ〜〜、ヒカリにユミちゃん。俺一つ提案があるんだけど……」 「何?」 二人は光の唐突な台詞に聞き返した。 「たった今、この時点を持って、アキとは絶交と言う事で一つ……」 「……賛成〜〜!!」 一瞬顔を見合わせた二人はぴたりと声を一致させた。 「ななな、何ですってーーーー!?!? 凸( ̄へ ̄)」 この日の四人は、午前からかなりのハイテンションで目立っていたと言う。 時は経ち昼休み。光はアキに呼び出されて屋上へと赴いていた。この学校は屋上に上がることが出来る。フェンスで囲まれているものの、丘の上だけあってその見晴らしは抜群だ。 「で、何だよ。俺だけ呼び出すなんて珍しいじゃん」 そう、アキが光だけを呼び出すのは確かに珍しかった。偶然会って二人で帰る、と言うことはままあるが、呼び出すなら大体いつもの四人で一セットだ。 アキのいつになく真剣な表情に、光も少し戸惑っていた。 「光……みんなには絶っっ対に内緒……だよ」 「ん、お、おう」 「……わいの、……で……のが」 「は??」 「こ、怖いの! 一人で帰るのが!!」 「はぁ???」 「だ、だから、昨日気付いたんだけど、その、誰かに付けられてるみたいでさ……。みんなの前では平気なふりするしかないけど……ホントは……その……怖いの」 アキの思いもよらぬ告白。それが、光達の運命を、変え始める。 ……つづく 前のページへ戻る 次のページへ進む 小説トップページへ戻る |